
ここでは、今まで体験した些細だけど不思議な出来事をいくつか紹介したいと
思います。
出来事その四
世田谷のアパートに住んでいた頃のこと。夜中の2時頃、コンビニからの帰り道。
僕のアパートは消防学校の裏にあり、コンビニからは細い路地を通って帰るのだ。
路地はまさに住民の生活道路といったもので二人並んで歩けないほど狭い。
途中に庭のある家があった。
庭はまるで手入れというものをしておらず、雑草が生い茂りさながら原生林の趣があった。
中央に大きな樹が立っている。
その周りを何か影が蠢いていた。
(……?何だろう…?)
目を凝らして見る…。影の正体がぼんやりと見えてきた…。
老人だった。 |
着物を着た老人が樹の周りをふらふらと回っている。回っている…。
サク、サク、サク……回っている…
雑草を踏みしめる老人の足音。回っている…。
深夜、こんな荒れ果てた庭で何をしているのだろう…。
僕は逃げるようにその場を離れた……。
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出来事その五
西伊豆、宇久須漁港へ釣りに行った。投げ釣りである。
防波堤の突端で遠投し、ぼんやり竿先を見ていたら
おかしなことに気が付いた。
向こうに見える岬の上に何かがせり出してきている。
ゆっくり…ゆっくり
やがて30分もたったころだろうか…せり出してきたものが
何であるか判ったのは…。
鉄塔。高電圧線の鉄塔である。 |
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岬の向こうに鉄塔を乗せた船がいて、それがゆっくりと動いているのかとも考えた。
しかしそうではなかった。
第一、電線を張ったまま鉄塔を移動させるなど出来る訳がない…。
確かに動いている。未だに動き続けているのだ…。
同行者に確認してみた。
「鉄塔? 最初からあそこにあるよ!」
幻覚とはかくも長く見続けるものなのだろうか…。 |
出来事その六
僕は営業で立川のT島屋百貨店に向かっていた。
中央高速の国立府中出口を出て、甲州街道、立川通りと抜けて、立川駅前へというルートだ。
割とスムースに流れていた道路が、立川通りに入った途端、大渋滞となった。
40分位も時間をロスしただろうか。
やっと少しづつ動き始めた。
ふと、道沿いに目をやるとバス停があった。
バスを待つ人で混雑している。
無理もない。これだけ渋滞していては、バスも遅れているのだろう。 |
その時…。
バスを待つ列の中にいた老婆が倒れたのだ。
ゆっくりと…。まるで夢のように…。
(ど…どうしたんだ!?)
おかしい…何かがおかしい…。
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老婆は倒れたまま動かない…。
バスを待つ大勢の人達の前で…。
なぜ誰も老婆を助け起こさないのだろう…?
誰一人顔色すら変えないでいる。
まるで老婆の姿が見えていないかのように…。
僕は何度も車を止めて助けに行こうかと思った…。
しかし結局そのまま通りすぎてしまった。
ある考えが頭に浮かび、助けに行くのをためらわせたのだ。
他の誰にも見えていないのだとしたら、あの老婆は一体…? |
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