誰かが見ていた…


昔、まだ僕が小学生だったころ。僕の部屋には毎日のように実体の無い誰かが来ていた。

夜、寝ていると階段を誰か上がってくる。(僕の部屋は2階の階段を上ったところにある)
ミシリ、ミシリと床の鳴る音がかすかに聞こえ、誰かが寝ている僕の枕もとまでやってくるのだ。
そして、僕のことを覗き込んでくる。ジーっと見つめたまま動かない。
意識を集中すると、そいつの呼吸の音さえ聞こえてくるのだ。

我慢できず、思い切って目を開けるとそこには誰も居ない。そんなことが来る日も来る日も続くのだ。


時は過ぎ、僕は大学生となり、やがて就職した。その間も前ほど頻繁ではないにしろ、時々誰かの影を感じることはよくあった。
例えば、アパートのドアの前に誰かが来ている。曇りガラス越しに人影が見えている。しかし、ドアを開けると誰も居ない。とか、部屋のドアのノブか゛誰も居ないのに勝手に何度も動いたりとか、まぁいろいろとあった。

そんなある日のこと。仕事から疲れて帰ってきた僕は部屋に着くなりベッドに横になった。
そのまま、うつらうつらとしながら窓の外を見ていた。

ぼんやりと月が見えていた。
「あぁ…満月か…。」
ほとんど眠りかけていたその時…!

月の下の辺りに、何か尋常でないものを感じたのだ。

そこに男が立っていた。

長い髪で片目が隠れた男。血走った眼。それでいて妙に力の無い眼。

僕のことを覗き込むようにして…。

「うわっ!」
一瞬で目が覚め、あわてて起き直って窓を見ると男は消えていた。

そして気が付いたのだ。窓の外にはすぐに消防署の壁が迫っていて、月など見えたりはしないことに…。

それでは、あの時見えていたあの満月は…?そして、部屋を覗き込んでいたあの髪の長い男は…。


答えは解らない。僕がまだ小さい頃から付きまとってきたあの影の正体はあの男だったのか…?

それ以来、男は現れず、付きまとっていた気配も消えている…。


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