山中湖の音楽スタジオ
Kは耳をすましてみた。…幻聴か…!?……いや、確かに聞こえる…。
ギターの音じゃない。あれはシンセサイザーの音だ…。
山中湖の夜の闇。切なくなるほどさみしいシンセサイザーの音が、か細く、かすかにメロディを奏でている。
Kは恐ろしくなって、周りで寝ていた友達を起こしてまわった。
「おい、起きてくれ…起きてくれぇ。」
友達は口々に文句を言っていたが、Kの話を聞くと青くなった。
確かにシンセサイザーの音がしているのだ。
「ほでも、無茶苦茶に弾いとらんで。メロディーになっとるやんか。」
「ほんまや。あれや、あれ、エリーゼのためにや。」
さっき聞いた怪談話と違う点が見つかるにつれ、調べに行く勇気が出てきた。
「行ってみるか。」
音のするスタジオへ向かうため、寝室を出た。外に出ると、一層はっきりとメロディーが聞こえる。
「やっぱ、スタジオや。」
「いたずらとちゃうか。」
スタジオを覗くと、真っ暗で何も見えない。しかし、中からエリーゼのためにが聞こえてくる。
…タタタタタタタン…タタタタン…タタタタン…
「誰やっ!!なにしとんねん!!」
「そこに、おるんやろ!!…出て来いやっ!!」
口々に叫んでみたが、反応はない。
思い切ってドアを開けてみることにした。
「いくで…いくでぇ。」
バーン!!
勢い良くスタジオのドアが開かれた。
タタタタタタタン!!タタタタン!!タタタタン!!
「おいっ、音が止まらんやんか!?」
「なんでや、なんで止まらんのんや!?」
メンバーの一人が思い切って中に入り、照明のスイッチを入れた。
一気にスタジオは眩いばかりに明るくなった。
……………。
「なんや、自動演奏やんか。」
ほっとしたような声が聞こえてきた。
Kたちが中に入って調べてみると、誰かが、シンセサイザーの自動演奏のスイッチを入れて行ったことが判明した。
「いたずらや。」
「おどかすわ、ほんまに…。」
Kたちは安心して談笑し始めたが、一人だけ真っ青になっていった。
「おまえらっ!!…おまえら、笑うとるけどなぁ、そのシンセは壊れとんやっ!!」
「!!」
昼間の練習中、調律が狂い、メロディーにならなくなったシンセサイザー…。
「おっ…おいっ…スイッチ入れてみろっ!…自動演奏させてみろっ!!」
ウワァンウォォンウォーンー…
…シンセサイザーは泣き叫ぶように唸りをたてるだけだった……。