棚卸し


この話は怖い話というよりちょっと不思議な話である。
それは僕が葛西にある文具問屋に勤めていた時のこと。

棚卸し業務の最中。商品の付け上げが終り、在庫金額の計算に入っていた。
商品倉庫は1F、計算をしている事務所は2Fである。

その会社の取引先は主要なものだけでも数十社あり、
商品の品番や品名だけでは仕入先を特定できないことが多々あった。
そんな場合、倉庫まで商品の現物を見に行って仕入先を確認し
棚帳に記入するのである。

正体不明の品番に出くわした僕は、現物を確かめるため、
1Fの倉庫に向かった。棚帳に記載された棚番を頼りに商品を探して行く。

しばらく探していると階段を誰かが降りてきて、僕のいる通路の隣の通路へと入っていった。
チラッと人影が見えた。Kだった。
そして、裏の棚でゴソゴソ何かしている。どうやら僕と同じで商品の確認に来たようだ。

ほどなく、僕の探していた商品は見つかった。
しかし、商品を見ても仕入先がわからない。
そこで、裏で作業しているKに訊ねた。
「Kさん、これ、どっから仕入れとるんやろ?」
Kは僕よりひとつ年下だが、会社では三年ほど先輩にあたり
商品知識はすごいのだ。

「……。」


「これ、このしょうもない物、どっから…?」

…返事がない…。
おかしいな、と思いながら裏へ回ってみると誰もいない。
さっきまで確かにゴソゴソやっていたのに…。
不思議に思いながらも、一人では仕入先がわからないので2Fの事務所へ戻った。
もちろん商品を抱えて…。

「ねぇ、Kさん知らん?」
事務所で同僚に尋ねた…。

「Kさん…? おらんよ。病院へ行った。」
「へっ?」
同僚の話だと一時間くらい前から病院に行っているという。

「うっそ、今、下におったじゃん。」
「いないよぉ。出てったきり、まだ帰ってないんだから…。」
しかし、同僚の話は正しかった。はたして、さらに一時間がたった頃、Kは帰ってきた。

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