鶴川街道 〜異世界へ続く道

何年前になるだろうか、秋の夕方、僕は営業で相模原方面にいた。
新しい店舗が開店するので、その準備に初めて訪れた街だった。

帰り道、都心に向かうために中央高速の方へ向かった。時刻は4時過ぎ。

道路は混んでいた。信号が変わる毎に、やっと一台づつ前に進めるほどで、高速までどのくらいかかるのか見当もつかない。
(参ったなぁ…。この辺、初めてだからなぁ…。)
抜け道も分からない。渋滞を我慢してノロノロと進んでいると、ふと「鶴川街道」という文字が目に入った。
(おっ。鶴川街道って聞いたことあるぞ。甲州街道まで行けたはずだ。よし。)
僕は進路を変更し、鶴川街道へと車を向けた。

……どのくらい走ったか…。

僕は、何かおかしいと感じ始めた。道がどんどん狭くなってゆく。最初は往復2車線あったのが、やがて1車線となり、路肩の舗装も崩れはじめてきた…。
(これが本当に鶴川街道だろうか…。)
うっそうとした木が覆い被さり、人家も無くなってきた…。薄気味悪い木々の向こうから寺の屋根が見えてきた時、僕は引き返すことに決めた。が…

鶴川街道
引き返そうとしてふと目をやった看板にそう書いてある。
(あれっ。やっぱ、これが鶴川街道か…。)
もう少し我慢して走ってみた。
道はまるで峠道のようになり、とても東京都内とは思えないほどだ。

やがて前方が開け、妙に薄明るい場所が見えてきた。
(なんだろう…?)
それは墓場だった。
秋の日は落ち、すでに暗くなっているにもかかわらず、墓場はぼんやりと光っているように見えた。

(気味が悪いな…。)
僕はなるべく墓の方を見ないようにして通り過ぎた。

墓の先から回り込んで、道は急激に下りになっている。
まっすぐに、奈落の底へと続くかのように下って行く。途中にT字路があり、前を行く車がすべて右に曲がって行く。次々と…次々と…

しかし、今考えてみるとおかしい。

さっきまで、誰もいない山道を走っていたはずじゃなかったか。
どうして今、目の前を沢山の車が走っていて不思議に思わないのか。

その時は、そんなこと、気にもしなかった。そして僕は他の車に逆らうように、ただ一台、直進を選んで車を進めていた…。


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