受話器の向こうは…
僕は出張で宇都宮へ行くことが多い。
夕方、宇都宮を出て、東京に戻るのが8時頃になることがある。
数年前、会社が元浅草にあった頃のこと。
11月、秋も深まったある日、出張から戻り、会社の車を車庫に入れ、帰路に着いたのは
やはり8時過ぎだった。
春日通りを都営浅草線の蔵前駅に向かって歩いていた。
周辺は夜が早く、8時を過ぎれば人通りもほとんど無い。
暗い夜道を駅に向かって歩いていると電話が鳴った。

トゥルルルルルルル…
トゥルルルルルルル…

三筋の交差点の近くにバス停がある。
そこに設置されている公衆電話が鳴り始めたのだ。

トゥルルルルルルル…

誰も居ないバス停の公衆電話が鳴り続けるのは、なんとなく不気味に感じられる。
僕は電話に出た。
番号を間違ってかけたのだろう。
「公衆電話にかかっていますよ」と教えてあげるつもりだった。

「もしもし…。」
「………。」
返事が無い。しかし、かすかに何かの気配のようなものが感じられる。
「もしもし!」
もう一度呼びかけてみる。
「………。」
やはり返事は無い。
混信か何かでベルが鳴ったのかと思い、受話器を置こうとした…
その時!
「う…。」
かすかに、かすかに声が聞こえた。
「もしもし。あの…」
「うあぁぁあおぁ……。」
苦しみを絞り出すかのような不気味なうめき声!
「うわぁ!」
僕は慌てて電話を切ると、逃げ出すようにその場所を後にした。
と、
ピロリロリロリロ…
僕の携帯が鳴り始めた。

続きへ  超心理学コーナーへ  トップへ戻る